がん遺伝子外来
遺伝子治療は根本的ながん治療ではないと考えております 抗がん剤などを用いずに正常細胞を傷つけず今発生しているがん細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導していく事は素晴らしい治療法です がん細胞の増殖を抑制・アポトーシス誘導はがん治療の基本と考えます その後免疫細胞治療などCTL(細胞性傷害T細胞)の誘導からメモリT細胞の誘導が重要と考えます
当クリニックの遺伝子治療について
がん細胞は様々な内的要因や外的要因により生じると言われます 通常であればがん化を防ぐ機構が細胞には幾つも備わっています この機構は核内の遺伝子にプログラミングされており、がん化を防いでいます たとえがん細胞が発生しても自然免疫のNK細胞などが働きがん細胞は消滅していきます 当クリニックでは発症を許してしまったがん患者さんに対し、点滴にて核内に遺伝子の運び役としてレンチウイルス(vector)を用いて治療します 際限なく細胞分裂を起こしてしまうがん細胞に対して増殖を抑制する遺伝子を核内に入れる、必要以上に発生してしまった細胞分裂を促進する遺伝子に対して※RNA干渉(下記説明)を起こし増殖を抑制させる、アポトーシス誘導シグナルをがん細胞に伝達させるなど多方面よりがんの増殖を抑制しアポトーシスへと誘導させる治療法です
この治療のメリットはがん細胞に作用し、正常の細胞には影響を与えません。本治療はP53 ※vector CDC6shRNA vector P16 vector PTEN vector TRAIL vector を合わせて静脈内点滴治療として行います すべてをお勧めしますが組み合わせは自由です
※Vector:細胞または核内に遺伝情報を運び込むもの
当クリニックにて使用する遺伝子と解説
P53 vector:P53遺伝子は細胞がストレスやDNA損傷などの「危険信号」を察知すると活性化するがん抑制遺伝子の一つです がんを防ぐため様々な遺伝子に命令を出す司令塔の役割をしています DNAの傷を認識した場合、傷の修復や、損傷の多い細胞にはアポトーシス(自死)させることで、がん化する前に細胞を消去します 具体的には細胞周期のG1期→S期に進める遺伝子に働きか過剰な細胞増殖を止めることでがんを抑制します P53異常はヒトのがんの約50%に認められます 正常なp53を投与することでがん治療効果を促進します
CDC6shRNA vector:CDC6(:cell division cycle 6)は細胞を増殖させるタンパク質の一種で、細胞分裂周期の調節因子の一つです 通常は細胞周期の初期(G1期)にのみ少量発現していますが、多くのがん細胞では全周期(G1、S、G2、M期)において大量に発現しています CDC6の過剰な発現により、癌細胞は際限なく増殖し続けます その後がん抑制遺伝子の不活性化も生じ、がんの進行につながってます CDC6shRNAは※RNA干渉(下記説明)という技術を応用して開発され、CDCタンパクの発現を抑え、がんの増殖停止と細胞老化・アポトーシスへと導きます。
※RNA干渉:相補的な標的であるメッセンジャーRNAの分解を促進して目標遺伝子の翻訳を阻害 標的タンパクの発現を特異的に抑制させること
p16 vector:細胞周期をG1期で停止させ※細胞老化を誘導・異常な増殖を防ぎ発がん抑制します 正常な細胞ではp16はほとんど機能していません しかし、細胞が限界まで分裂した場合や、様々な発がんストレスにさらされた場合は、p16の発現が著しく上昇します 多くのがん細胞ではp16遺伝子変異や活性の停止が認められます p16遺伝子を投与することでがん細胞の無限増殖を抑制して排除します
※細胞老化:細胞の異常な増殖を防ぎ、発がんを予防する生体防御機構
PTEN vector:p53とともにがん抑制遺伝子として位置付けられてます PTEN遺伝子はがん細胞が増えすぎないようにがん原遺伝子の※AKTの働きを制御し、がん細胞の増殖にブレーキかかけ、アポトーシスを促す役割をしています PTEN遺伝子は様々な癌において高頻度に変異や欠損が認められます DNAのみならずタンパク質の異常も含めて半数(以上)のがん細胞でPTEN遺伝子変異を認めます 正常なPTEN遺伝子を投与することでがん細胞の過剰な増殖を抑制して、アポトーシスへと導きます
※AKT:細胞の生存へ作用する主要なメディエーター アポトーシス促進シグナルの阻害をしている
TRAIL vector : TRAILは、TNF(tumor necrosis factor; 腫瘍壊死因子)ファミリーの1つ 免疫システムのサイトカイン伝達物質です 周囲の正常組織に影響を与えずにがん細胞の表面に存在する受容体(デスレセプター)と特異的に結合しアポトーシス誘導シグナルを細胞内に伝達する これによりがん細胞のアポトーシスを誘導します 各種免疫細胞治療との併用をお勧めします
簡易イメージ
アポトーシス (p53 PTEN TRAIL)
増殖抑制 (P16 PTEN CDC6shRNA )
正常細胞の分裂周期
G0期(分裂停止)→ G1期(DNA合成準備期)→ S期(DNA合成期)→ G2期(分裂準備期)→ M期(分裂期)→ G0期(分裂停止)
がん細胞はM期からすぐにG1期へ入りG1→S期において分化・老化・アポトーシスが起きない
p16: 細胞周期をG1期で停止させ、細胞老化を誘導
P53:G1期→S期に進める遺伝子に働きと過剰な細胞増殖を止める
CDC6:通常は細胞周期の初期(G1期)にのみ少量発現される 多くのがん細胞では全周期(G1、S、G2、M期)において大量に発現
副作用
- 初回の点滴後に微熱程度のお熱がみられることがあります
※体内の免疫が動かされることによるものなので問題ありません - 点滴の際、稀に皮下血腫・神経損傷等の合併症が起こることがあります
- その他…蕁麻疹、吐き気等
※個人差がありますので全ての方に効果や症状が見られるものではございません