ANK療法
体内から採り出したNK細胞を体外培養によって活性化・増殖し、体内に戻します
人体から採り出した「野生型」のNK細胞は活性が高ければどの様ながん細胞でも傷害することが知られています。
ところがNK細胞は増殖スピードが遅いため、細胞数を揃えるには大量に採取する必要があります。
そこでANK療法では、血液成分分離装置を用いて、5~8リットル位の血液を体外に循環させながらNK細胞を含むリンパ球集団を分離採取します。
血液成分の大半は体内に戻しますので「血液が減る」ことはありません。また血液中の全てのリンパ球を採り出し
ても、血液の外にはその100倍以上のリンパ球が存在しますので「リンパ球が減る」心配はありません
リンパ球の分離採取には準備も含めて3時間ほどかかります。
抗がん剤で血管が傷んでいる方や持病をお持ちの方など大量の血液を体外循環させることに不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。
リンパ球分離採取にあたっては、医師が血管の状態をみた上で診断をしますのでご安心ください。なお、リンパ球の分離採取ができない場合には注射器で全血採血を行うこともあります。詳しくは医師が面談の際に説明します。
採取された「濃縮」リンパ球は、京都の細胞培養センターまで採取当日の内に持ち込まれます。細胞搬送の専門業者に運んでもらうか、あるいは運ぶ人をご自身が手配されても構いません。
培養細胞を点滴で体内に戻す
培養細胞は原則、点滴で体内に戻します。治療日程は、抗がん剤のスケジュールなどや患者様のご都合に合わせて調整します。
原則は2~3日おき、週に2回の点滴です。培養された細胞は凍結保管されていますので治療スケジュールは柔軟に設計できます。
培養細胞に期待される作用は主に以下の三つです。
- 培養NK細胞が体内で直接がん細胞を攻撃し、傷害する
- 培養NK細胞が体内で免疫刺激物質を放出することで、体内に眠る大量のNK細胞を目覚めさせる
- 体内の免疫抑制が緩和されることでCTL細胞※ が、がんへの攻撃に加わる
※CTL細胞はT細胞の一種で、ごく一部が特定のがん細胞だけを攻撃します。
副作用(副反応)
免疫細胞療法の場合は副反応と言いますが、薬の場合の副作用という言葉に相当します。
ANK療法の点滴後には様々な免疫副反応を生じます。免疫副反応の出方は人により様々です。その中でもほとんどの方に生じるのが発熱、次に多くみられるのが悪寒です。他は様々なものですが、風邪の症状から喉の痛みや咳を除いたものというイメージです。
詳しくは医師にご相談ください。
いずれも一過性のものですぐに治まります。
ただし、初回点滴時には、発熱の波が何度か繰り返すことがあり2~3日は様子を見る必要があります。
2回目以降は、何日も熱が続くことはなくなり、様子もわかり、症状も落ち着いてきます。
ごくまれに初回、2回目にほとんど反応がなく3回目以降に強い反応が出る人もいます。
副反応の対処については、面談の時に詳しくご説明します。
がんの部位や種類を問わず、血液のがんも治療できます
NK細胞は体中を巡り、がん細胞を見つけ次第攻撃するのが本来の性質です。そのNK細胞を用いる治療ですから、対象となる「がん」の部位や種類を問いません。
ATL(成人T細胞白血病)のような標準治療が確立していない血液のがんでも治療実績があります。
白血病の場合、血液から採取された免疫細胞にがん細胞が混ざります。
これが培養中に増殖しますので混入するがん細胞を排除する前処理を行わない限り、一般的に免疫細胞療法では白血病の治療はできません。ANK療法の場合は、培養中にNK細胞自体が混入したがん細胞を排除するため治療できます。
但し、あまりにも混入しているがん細胞が多い場合は培養困難になることもありますので事前の検討が必要です。
ATLの治療を行い、著効となったケース等が国際学会や論文などで報告されています
または新聞社の取材記事をご覧ください。(こちらは日本語で内容が分かりやすいです)
ただし、脳腫瘍や、白血病などの場合は、制限や特殊な条件がありますので、面談時にご相談ください。
NK細胞ががん細胞を傷害する効率を高める分子標的薬の併用も検討します
分子標的薬そのものは、がん細胞を傷害しませんが、免疫細胞などの正常細胞も傷害しません。
がんの増殖にブレーキをかけたり、体内のNK細胞の活性を高める作用(ADCC活性)により、
治療効果を発揮することを狙って用いられます。分子標的薬が使えるかどうかは医師が慎重に検討し判断します。
その上で患者様が投与に同意された場合は、ANK療法との併用を行います。
仕事を続けながら、治療を受けることも可能です。
副反応の程度は人によって違います。点滴当日だけは仕事を休まれる方や、時間を調整して仕事を休まない方もいらっしゃいます。